2007年11月9日金曜日

オーストリアでの出来事


 前回と少し繋がる話です。

 今回の旅行で、オーストリアに行った時の話です。滞在したのは二日、ウィーンのビジネスホテルでした。そのうち、一日を「風光明媚な地方に足を伸ばしてみよう」(結局、ウィーン市内っていっても、東京や大阪みたいなものですし)と、クルムス(Krems、クレムス?)と言う街に行ったときのことです。

 ウィーンから約八十㌔、列車で約一時間。ドナウ川に河畔にある街です。朝に出発して、駅に着いてからドナウ川にそって遊歩道をぶらぶらと歩きました。歩いたのは一時間くらい。ちょうど、お昼になったわけです。で、長谷川さん(このひと誰?と思った方はコチラ)は「こっちに何か食い物屋があるはず」と丘の上の住宅地(右写真参照)へずんずんと入っていきます。実は、その場所について知っていたわけではなくて、長年、欧州を歩いてきた長谷川さんのカンだったのですが。

 そのカンも当たり、無事僕ら一行は食堂にたどり着きました。その食堂での出来事。

 今回の旅行は僕、長谷川さんと福井県の鯖江市で、僕と同様に現地でスロバキア国立オペラ公演を手がけている方(七十一歳)とその方のお花(華道)のお師匠さん(八十七歳!)の四人で行きました。さて、オーストリアです。公用語はドイツ語です。メニューもドイツ語です。日本のメニューみたいに写真はありません。店主の方も、そもそも地元の人しか利用しないようなお店ですから、英語は苦手のようです。函館で言うなら、中道食堂とか、そんな感じのお店ですね。
 お師匠さんは歩き疲れたのと、もともと好きでもあるので、長谷川さんが「アイスクリームはあるの?」と尋ねます。すると、背後のテーブルがざわめくわけです。
「え、アイスクリーム!?」
「今、アイスって言った?」
「あ、食べるんだ、アイス」
 当然、ドイツ語ですし、僕はドイツ語は「Achtung!」とか「Verdammt」とか「Scheiße」とかPanzerlliedの歌詞くらいしか知りませんから、正確にこう言っていたかは解りませんが、そういうリアクションだったわけです。さてさて、お師匠さんと鯖江の代表の方はとりあえず、アイスとなりました。僕と長谷川さんはワインを注文します。さて、そこで食べ物に話は戻ります。解らん。困った。

 すると、隣のテーブルのご夫人が英語で話しかけてきてくれました。メニューを指差して「これ、ベーコンとチーズの盛り合わせだから、何人かで食べるには丁度いいんじゃないかしら」と。注文する事にしましたよ、それを。そして、「このお店には今年漬けたばかりのワインがあるからそれを注文してみたら」って言うんです。もちろん、即、注文決定です。飲んでみると、普通にフルーツジュースみたい。発酵しきってないから、アルコール度数もかなり低いはず。こーゆーものに触れると、日本のお酒関係の法律もどうにかならないかなって思います。よく、地ビールなんてあります。それは、それぞれの土地で変化をつけようとしているのは解りますが、大手ビール会社の製造法を踏襲しているわけで。会社組織が作っているものであるわけです。結局、日本では飲み屋さんとかで、「これ、俺が爺さんから作り方教わったどぶろく。飲んでみてよ」ってな話にはならないわけで。ちょっと、寂しいですね。

 驚いたのはそのご夫人の旦那様です。話を聞くと、「勤めていた会社が住友重工と仕事をしていたので、東京に住んでいたことがあるんだ」とのこと。
 えーと。
 例えて言うなら、函館観光に来たオーストリア人が、恵山あたりへツツジでも観に行って、プラリと地元の食堂に入るわけです。そこで、何を注文したものか困っていると、ドイツ語で話しかけてくる地元の老夫婦がいて、「いや、勤めてた会社の関係でウィーンに住んでたんよ」って言うようなものです。

 さて、まとめます。
 最初にアイスについてリアクションしていた背後の一行。きっと、英語を話せる人がいたと思うんです。でも、話しかけてくれたのは、日本に滞在していたことがある、老夫婦でした。
 なんでかって言ったら、過去に日本人と仕事をしたりして、その付き合いのなかで「日本人ってこんな感じのやつら」ってイメージが出来ていて、そこで「ああ、困ってるみたいだから、助けてあげよっか」って考えたんじゃないかと僕は思うんです。
 もっと言えば、僕の背後にいた一行は、僕らが日本人か、中国人か、韓国人か判別がついていなかったと思います。でも、話しかけてくれた方は、日本にいたことがあるから言葉は理解できなくても僕らが話しているのを聞いて、「あ、これ、日本語じゃないか」って判断したのでしょう。

 ようやく、ここまできて、前回の話と繋がります。前回はオランダでの反日感情の話でした。オランダの人たちの多くは、僕の背後にいた一行のように、日本人と接したことがほとんどない人たちなのではないでしょうか。
 今回の老夫婦みたいに、今の日本人と接して、「アレ? コイツ案外良い奴じゃん」って人が増えれば、また、変わってくるのではないか、と。

 いや、アメリカの原爆投下と現在のその歴史的評価について、異論を唱える日本人は少なからずいるとは思うのですけど、だからといってアメリカ国籍を持つというだけで、当時の原爆投下と何の関係もない留学生あたりが、開口一番に「アメリカの原爆投下は非道な民間人の虐殺でした。日本人に謝罪します」って言ってきても、それは「お前は何を言っているんだ」としか言いようがないでしょって話です。

 今日はここまで。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

その街は、たぶんクレムスと日本語では表示すると思います。
それから、ワインがホイリゲだったら結構アルコール度数が高かったのでは?
飲みやすいので気が付かないようですよ。
素敵な食事と出会いがあって良かったですね。

函館スロバキア・オペラ交流の会 さんのコメント...

コメント、ありがとうございます。

さて、アルコール度数、実際のところどうなんでしょう。確かに飲みやすいと勘違いすることはあります。ただ、鯖江の方がアルコールにアレルギーを持っているのですが、実際にコップ一杯分を口にして、何もなかった、ということもあったのです。
アルコール度数のせいなのか、ほかに要因があったのか。機会があったら調べてみたいと思います。